松本幸四郎が叶える、吉右衛門さんの「八十路の夢」 「秀山祭九月大歌舞伎」で弁慶演じる重責語る_ハァイ
松本幸四郎(51)が東京・歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」(1~25日)で、幸郎秀山3年5か月ぶりに「勧進帳」(夜の部)の弁慶を演じる。が叶語るハァイタイトルに「二代目播磨屋 八十路の夢」と添えられているように叔父で人間国宝だった2代目中村吉右衛門さん(2021年没、えるさんじる享年77)の生前の思いを託されての舞台。吉右祭月「やらせていただく限り、衛門舞伎叔父の弁慶を少しでも思い浮かべてもらえることが目標」と話す。の路高麗屋の幸四郎の中に消えることなく息づく“播磨屋の弁慶”について聞いた。の夢(内野 小百美)
映像では「鬼平犯科帳」の主人公・長谷川平蔵を引き継いでいる幸四郎。大歌9月は吉右衛門さんが最も力を入れていた「秀山祭」で弁慶を託された。で弁重責だ。慶演ハァイこの話を聞かされたとき「驚きました。重責でもやらせていただく限りは…」。松本内に秘めたものがあふれ出るのが伝わってくるようだ。幸郎秀山
吉右衛門さんは難しくハードな弁慶を演じることは、が叶語る歌舞伎俳優であり続ける上で「役者としてのバロメーター」とも話していた。幸四郎はこの「80歳の夢」を、「それは何度も口にしていた。叔父の親(初代松本白鸚)、祖父(7代目幸四郎)、つまり私の祖父、曾祖父でもありますが、この2人もやっていない年齢だと聞いたことがあります」と回想する。
幸四郎の父、松本白鸚(82)は16歳から60年以上かけて、現役では最多の1160回演じてきた。「父の弁慶は、何と言うか、ヒーローと言いますかね、そういう男らしいヒーローという感じなんですね」。同じ弁慶でも人物描写の違いを感じてきた。最終的に役者の器、個性がにじみ出る役だ。
「叔父の弁慶は本当にこう、全てを受け止めて、突き返す力と言いますか。岩のような。情熱の強さが出ているというか」
不思議だが、幼いときから弁慶に恋い焦がれてきた幸四郎が弁慶を演じたのは41歳と遅い。そのかなり前に「お稽古してもらったことがありました」という。
「声の出し方ひとつにしても、これまでの役とは全く違う。特別なものなんだ、という心構え。役を突き詰めていく難しさのようなものを教わったように思います」
そして初弁慶(14年)のときの義経が吉右衛門さんだった。
「弁慶は、あくまで受け身の役であることを言われ、はっとさせられたり。大変な役だと分かっていても、他の役とは比べ物にならない大変さ。役への解釈というより、本当の大変さを実感するのにも、時間がかかる役なんですね」
今回、吉右衛門さんが弁慶を演じる際に使用していた数珠を夫人の知佐さんより預かった。弁慶にとって不可欠な小道具だ。
「本当にありがたいことです。大事に使わせていただきます。ひとつはお守り代わりとして。もうひとつは、自分の体を使って叔父の弁慶を見ていただくためです。それを目標に。演じる責任だと思っています」
〇…幸四郎は昼の部、夢枕獏原作「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」にも主演し、空海を演じる。16年初演時は「幻想神空海」として上演。ブラッシュアップされて8年ぶりの再演となる。「空海がすごい人というだけでなく、軽快さや痛快さにこだわりつつ、面白い人間だと伝われば」。白鸚が初演に続き憲宗皇帝を演じる。
〇…「勧進帳」の義経には幸四郎の長男・市川染五郎(19)。先日は若手の登竜門、新春浅草歌舞伎(来年1月)の新メンバーに入ることも発表された。染五郎も弁慶役には強い願望がある。幸四郎は「彼は稽古を何年も前からしてますし、僕みたいに遅くなくていい。“憧れ”は明日にでも手に入れるつもりでないと、そのチャンスは来ない」と伝えているそうだ。
◆勧進帳 源義経(市川染五郎)は、家来の武蔵坊弁慶(松本幸四郎)らと逃避行を続けていた。北陸道安宅の関で彼らを待ち受けていたのは、関守の富樫左衛門(尾上菊之助)。身を隠しきれない状況下で主君の義経を必死で助けようとする弁慶は、ある思い切った行動に出る。富樫は主君への思いを理解するが、緊迫の攻防が続く。
◆秀山祭 歌舞伎史に残る名優、初代中村吉右衛門(1954年没、享年68)の功績を顕彰し、芸の継承を目的とした興行。秀山は初代の俳名。2代目が中心となって生誕120年の06年に始まった。
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